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第522話 左翼の絶望

王翦に左翼本軍が攻撃を始めた模様という報告が部下から入る。
趙右翼紀彗軍本陣では秦軍の第二波五千の騎馬隊の攻撃を受ける。さらに奥にいた秦軍は一つの軍を二つの波に分け、攻撃を仕掛けようといていた。それは波状攻撃であった。
麻鉱軍第二波により紀彗軍の隊形は大きく崩れ、大きな被害が出ており、一方的な展開になっていた。麻鉱はこの一方的な展開は陽動の功であり、蒙恬の活躍ぶりを称賛した。

麻鉱は出陣する前に王翦と蒙恬と作戦の打合せをしていた。そこで蒙恬は左翼本軍到着までの囮の役目しかと承りましたと答える。麻鉱は重大な役目だぞと釘を刺す。さらに全王翦軍の中で最強の攻撃力を持つ麻鉱軍の力をどう趙右翼軍にぶつけるかは蒙恬にかかっているものの、蒙恬が失敗しても左が負けることはないのだがなと嘲笑う。蒙恬は麻鉱の言葉に反論せず、麻鉱の目をずっと見ていた。麻鉱は王翦に生まれの良さを鼻にかけた目つきをするこの若造に何か囮となる策を一つとお願いしようとすると蒙恬は必要ありませんと断る。蒙恬は心配せずとも楽華隊の戦い方できっちり麻鉱軍の波状攻撃につなげると言い切った。麻鉱はなぜ波状攻撃をかけると知っていると聞くと、蒙恬はそれには答えず、最高の形を作って待っているので、そこからはしっかり頼みます、もたついたら主攻の座をうちがもらいますからねとだけ返した。

趙軍兵士は見えていなかった敵の奇襲を受け、敵数を実際よりはるかに多いと錯覚していた。さらにそこへ、五千もの騎馬第二波が加わったことで、紀彗兵は敵が数万に膨れ上がったような重圧を受け、大きく士気を下げさせられていた。しかもこれが第三波、第四波と続いてくるため、この強烈な波状攻撃をさらに横腹に喰らえばもはやこの戦場の勝敗は決したも同然であった。
だが、紀彗がそれをさせなかった。次々と指示を出し、立て直しを図ろうとする。部下からの本陣を後ろに移動し、後退し、前線を作り直すという進言を退け、全隊に本軍死守の令を出し、奮い立たせようとした。さらに敵が少数であるとことも全隊に伝えよと指示する。これは総数で負けている王翦の策であり、単純な戦力は紀彗軍の方が上であり、今の流れに押し切られさえしなければ必ず勝てると檄を飛ばす。
だが実際は楽華隊の奇襲及び麻鉱軍の波状攻撃により、兵力は同等か逆転していたのであった。無論そこは承知の上での檄であった。
この戦局の移ろいの中で麻鉱以上に紀彗が脅威を感じたのは蒙恬であった。

蒙恬は引いていく馬呈を見て、紀彗軍の本陣は健在で波状攻撃に耐えていると判断し、王翦が想定していた配置になったと語る。

紀彗本軍では対策が練られる。紀彗は蒙恬の遊軍が挟撃してくる可能性を危惧していた。部下からは楽華隊は本軍襲来のためのただの囮だったのではないかと聞くと囮で終わらすには五千の隊は大きく、波状攻撃を止めるために全力を注がなくてはならない紀彗軍に対して、五千の遊軍は真横からでも背後からでも決定打を撃ち込む最大の脅威であると話す。紀彗はそうなると戦局は遊撃隊を率いる将の才覚次第で大きく変わるが、開戦からの動きを見ても蒙恬は只者ではないと感じており、開戦前にここまでの盤面を描ききっていた王翦に恐れを感じていた。

王翦に左翼の戦局が伝わった際、王翦はやはり見えておったかと呟いた。そのつぶやきは左翼配置を伝えられた時の蒙恬のもたついたら主役の座をうちがもらいますからねという発言に対してであった。つまりその時すでに蒙恬にも王翦と同じ盤面が見えていたのだ。
蒙恬は一度敵の視界から消え、次の一手で大将紀彗の首を取ると宣言する。






さすが蒙恬!!!天才的な戦術眼を持ち、王翦のやはり見えておったかと言う一言に蒙恬の才能を認める気持ちがしっかり入っているのだなと嬉しくなりました。
しかし、紀彗って確か本能型の将だったと思うけど、未だにその片鱗は全く見えず…
あと、天才李牧はどう仕掛けくるのか、、、右軍救済に動くのかな

第521話 機動の妙

数の不利をものともせず、紀彗軍を楽華隊は翻弄する。狩場に引き込まれた紀彗兵は楽華隊にことごとく蹴散らされ、本陣まで退却する。蒙恬はそれを追いかけ、徹底的に背を叩いた。
その苦戦の様子は紀彗と馬呈に伝えられ、怒った馬呈は騎兵五百を引き連れて、楽華隊に襲いかかろうとする。
蒙恬はそれを見るとすかさず退却しようとするが、馬呈は逃すまいと追いかける。紀彗は今すぐ馬呈を呼び戻そうと伝令を走らせる。
蒙恬は黒羊戦の全容の情報から紀彗軍に関してほぼ丸裸にしていた。馬呈は紀彗の側近中の側近であり、圧倒的な武力で紀彗軍の攻を一手に担う男で、もう一人の片腕の劉冬亡き今、馬呈を討てば紀彗軍の力は半減すると分析していた。蒙恬は願ってもいない好機であるため、序盤で馬呈を仕留めようと考える。
馬呈が蒙恬達騎馬隊に追いついた瞬間、じい達が参上し、馬呈に襲いかかる。歩兵も来ており、蒙恬は再び旋回しら背後に回って、退路を断ち、馬呈の首を取ると宣言する。しかし、馬呈が振り下ろした斧に楽華隊は粉砕される。蒙恬は馬呈の力は報告以上だと認識する。

紀彗軍本陣に馬呈と楽華隊が乱戦に入ったことが伝えられる。紀彗は蒙恬の戦いぶりをみて、数多の戦い方を熟知していると感じていた。蒙恬は騎馬の機動力を駆使し、急襲と離脱を繰り返し、紀彗軍の戦力を削ぎ続ける戦術であり、放っておけば外側の歩兵がやられ、半端な数の騎馬で追えば奥に罠をはられ、それも討たれてしまうのであった。そこで紀彗は三万の全力で追い詰めて一撃で楽華隊を消滅させるべく、全軍右向きに陣形を変えさせる。紀彗軍は目を疑う程の早さで陣の形を変え、出陣した騎兵と歩兵は全速力で楽華隊に迫っていった。
しかし、結果これが完全に裏目にでる。紀彗軍全軍が右側に陣形を変えきった時、それまで正面だった左側より地平を埋め尽くす程の秦の騎馬隊が出現したのである。それは中央軍にいた王翦の片腕麻鉱軍五千であった。さらに出現した騎馬隊の奥にさらに五千の騎馬隊が紀彗軍に向かっており、さらにその奥に五千から一万の歩兵大軍勢が紀彗軍に向かっていた。



なんと序盤からすごい展開になって来ましたね。王翦のとんでもない作戦にいきなり紀彗軍はピンチに陥りましたね。しかし、そのきっかけを作った蒙恬はやはり非凡であり、その力は紀彗も認めるところでした。
ところで、麻鉱の奥の騎馬隊の五千とその奥の歩兵大軍勢はどの軍だろうか…やはり王翦軍のどこかの部隊なのでしょう。飛信隊を投入するには早い気がしますし…
ここで、天才李牧はどう巻き返しを図るのか、このまま右翼がもぎ取られるということは流石にないでしょう。

第520話 火蓋を切る

秦趙両大軍が対峙する。空気が張り詰める中、秦軍陣形の不可解さに一同に動揺が走っていた。信は飛信隊を中央軍に置くのであれば前かせめて横に並べろよと文句を言う。信がいる最後尾では戦場が全く見えなく、これでは飛信隊が李牧を恐れて隠れているみたいだと言う。貂はそれを聞き、王翦は飛信隊を敵から隠すために最後尾にしていると勘付く。羌瘣は左側に注意を払った方がいいと話す。この戦いは左側から動く、この布陣では左翼の方があまりに深刻な状況だと続ける。

趙本陣に秦の布陣が伝えられる。李牧はそれを聞き、開戦前から仕掛けて来るとは意外と大胆だと感じていた。
戦はそれぞれ戦いやすい局面から始めるのが常であり、そういう意味で秦軍左翼の五千という数字は極端に少なく、あからさまな挑発行為であった。それはさっさと左翼を攻めて来いという王翦から李牧へのメッセージである。李牧はここで二択を迫られる形となった。王翦の挑発通り秦軍左翼五千に紀彗軍で構成される趙右翼三万をぶつけにいくか、王翦の怪しい誘いに乗らずにそれ以外のところから始めるか、李牧の選択は前者であり、紀彗に秦軍左翼五千の殲滅の命令が下る。
これが王翦軍対李牧軍の開戦の号令であった。

楽華隊に趙軍右翼三万が真っ直ぐ向かって来ることが伝えられる。蒙恬はであれば仕方ないと出陣する。じぃは老体では主力騎馬隊には追いつけぬとし、陸仙に蒙恬のことを頼む。じぃは陸仙の矛の実力や機転を認めての依頼であった。陸仙は三万の敵にこの楽華隊五千で挑む王翦の無茶振りにも全く動じない蒙恬は大将軍と同じ目線で戦がみえており、もう若君扱いを止めた方がいいと諭す。

紀彗は全軍停止し、しばらく様子を見るとした。そこに前線の物見より敵の左翼五千がいつの間にか半分になっているという報告が入る。消えた半分は蒙恬が率いて紀彗軍の右の横腹をえぐったであった。
紀彗は右軍を右向きに陣を敷き直させ、騎馬隊に蒙恬の背後に回らせようとする。それをみた蒙恬はその場から離脱する。しかし、紀彗軍の放った騎馬隊は蒙恬達を追いかける。ところが、その騎馬隊に別働隊の陸仙の矛が突き刺さる。蒙恬はようこそ狩り場へと語る。




ついに苛烈の戦いが始まりましたね。王翦の誘いに李牧は乗った形になりますが、機先を制した蒙恬は流石ですね。李牧でも測れなかった王翦の意図を理解して動いた蒙恬はやはり頭脳ではすでに大将軍級であることは間違いないと思います!!
ただ、左軍の戦いは蒙恬は善戦はするだろうけど、紀彗、馬呈が出てきたら、流石にきついと思うので、次の手がどうなのか気になるところですね。そこにきっと王翦の誘いの片鱗が出て来ると思います。

第519話 総大将の流儀

邯鄲よりおよそ西に五十里、鄴より北におよそ七十五里に広大な平野と時折進軍をさえぎる森林と山が混在する朱海平原があった。そこはこれから南下する李牧軍と北上する王翦軍が激突する場所であった。
そして、両大将は斥候と共にすでに現地に入り、見晴らしのよい丘に立ち、地形を頭に入れて、そこに軍を想像し、陣形を組み動かし、壮絶に戦わせていた。両者の戦いはすでに始まっていたのである。

鄴では趙の解放軍が桓騎軍と戦っていた。そこではリン玉の騎馬隊が大いに活躍をしていた。趙軍は鄴が見える分、否応なく意識が前に来るため、リン玉の旋回横撃によって大打撃を喰らっていた。そこに雷土からの伝令が入る。現在戦っている敵の他に新たに左右から二千ずつ近づいているとのことであった。さらに別のところから新手の二千の騎兵が迫っているとのことであった。実際は桓騎軍に余裕はなく、摩論はその対応に大きく苦心していた。

朱海平原では両全軍が到着する。それぞれ将校を呼び寄せる。そして、作戦を伝え、配置に着かせる。秦軍は中央に王翦、麻鉱を置き、その後ろに飛信隊を配置し、合計五万八千、右翼は亜光と王賁で合計二万五千、左翼は蒙恬の五千であった。一方、趙軍は中央に李牧、金毛、カイネ、傅抵、尭雲を置き、合計六万、趙軍左翼は趙峩龍、馬南慈、岳嬰の合計三万、右翼は紀彗、馬呈の合計三万であった。
信は左翼の蒙恬を見つめる。

蒙恬は部下たちに楽華隊が栄えある第一陣で始めるぞと言うと楽華隊は大いに湧き上がった。




ついに陣形も明確になりましたね。王翦と李牧の意図は判りかねますが、蒙恬の左翼五千は相対する紀彗の三万に比べて、六分の一と非常に少なく、下手をすれば一気に飲み込まれてしまう恐れがあり、心配です。
蒙恬が王翦から作戦を伝えられた際、じっくり盤面をみて、心得ましたと言ったことから、王翦の作戦を理解し、これでも戦えるという判断をしたのでしょうね。内容はわかりませんが…
合従軍以来の蒙恬の見せ場なので、ファンとしては期待大です!!

第518話 戦地橑陽

それぞれの知らせは両軍ほぼ同時に伝わった。公孫龍は伝令より秦軍が鄴に対して兵糧戦を仕掛けており、閼与または橑陽の軍で鄴を解放しなければならないと聞く。公孫龍はならば待ちはここまでで、眼前の山民族軍を撃破するこということだなと確認すると伝令は李牧より山民族は圧倒的攻撃力を有していること以外は謎に包まれていることが多く、数の差の勢いで始めると大損害を被る危険があるため慎重に動くようと指示されていることを伝える。伝令はさらにとにかく大将を引き継ぐ舜水樹が到着するまで待機せよ、場合によっては橑陽に巣食う主力部隊も引き込む必要があるかも知れないと李牧の言葉を伝える。
公孫龍は蕞の解放は一瞬の出来事であり、故に李牧は山民族の力を測りかねているのだと感じていた。公孫龍は伝令に舜水樹はあとどのくらいで到着するのか確認する。伝令は半日のうちに到着すると返事する。公孫龍は舜水樹到着後、すぐに始められるよう全軍攻撃の隊形に変えるよう指示を出す。

一方、楊端和のところには壁が十日分の兵糧を持ち、一万の軍勢で向かっていることが伝えられる。伝令は王翦からその六万で相対する橑陽九万を足止めし、鄴の食糧が尽きて陥落するまで日数を稼ぐようにと伝えた。楊端和は相分かったと返事する。
しかし、楊端和は全軍に対して始めるぞと叫ぶ。

そして、山の民と趙軍がぶつかり合う。
趙軍にとって予想外だったことが二つあった。一つ目は趙軍を鄴へ行かせないと守ってくると思われた楊端和軍が逆に攻めてきたこと、二つ目は山の民の持つ破壊力が予測の数倍上をいっていたことである。

そして、信たちの軍勢も決戦の地に近づきつつあった。




ついに秦軍と趙軍の戦いが始まりましたね。やっぱり楊端和は時間稼ぎなんてしないですよね…時間稼ぎするのと、敵を殲滅するのは同じだろうと言いそう…
これでは壁が到着するまでに終わってしまうかな?
しかし、そこは舜水樹が橑陽に巣食う主力部隊を率いることにより、互角まで持ってくるのかな??しかし、橑陽に巣食う主力部隊って何だろうか…響だけは何かとても怖いですね

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