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第500話 進軍路の兵達

始皇十一年、王翦、桓騎、楊端和連合軍は巨大なる列をなし、趙に向け出陣した。
趙西部前線の武白城では秦の進軍の急報が入る。そこには李牧、舜水樹、馬南慈、カイネ、傅抵達がいた。舜水樹が軍の数を聞くと伝令は十万から二十万と返す。傅抵は二十万であれば黒羊の三倍以上であると驚く。
李牧は昌平君は趙西部攻略の長期化が命取りになると気付き、この一戦に掛けてきたと判断し、カイネに扈輒将軍の出陣を依頼する使者送るようを指示する。扈輒将軍は王都の守護神と呼ばれる人物であった。李牧は秦は放てる力全てを出してきているため、さらに紀彗にも招集の指示を出す。李牧は最前線で情報を集めるとし、舜水樹には秦の兵糧の量と流れをしっかり追うことにより、秦の意図を推し量るようにと命令する。

河了貂は進軍する中、楊端和に会いに行っていた。
河了貂は楊端和に飛信隊は楊端和軍に入ることになっているが、飛信隊はある程度自由をもらってこそ力を発揮するため、細かい戦術を使う時は飛信隊を中心に置かないようにと依頼する。楊端和は昌平君よりそう聞いているから安心しろと返す。
楊端和は河了貂に大きくなったものだと微笑み、最初に政と信と河了貂の三人で会いにきた思い出を語る。河了貂は自分も含め、信も政もこんな風になるとは夢にも思わなかったと呟く。しかし、楊端和は政の目を見たときにここまでになると感じていた。
河了貂の目に桓騎軍の最後尾が入る。河了貂は今回の戦いは速さ勝負になるのに桓騎軍の進軍の遅れていると怒りを露わにする。
しかし、楊端和は桓騎軍が遅いのではなく、山の民軍を先導している飛信隊の足が速すぎると指摘し、さらに少し肩の力を抜けと諭す。鄴攻めを知る中で昌文君と河了貂が一番力が入り過ぎており、その不自然な緊張は下の兵にも伝わり、それがそのまま趙にも伝わると教える。
今回の鄴攻めは黒羊の西部攻略と見せかけて、趙軍主力を西に固めさせ、途中で進路を変え、一気に王都圏に攻め込む作戦であり、いち早く西部攻略が嘘だと気付かれ王都圏を固く守られれば近づくことさえできなくなる。序盤戦はどこまで李牧を欺き、鄴攻めを悟らせぬかにかかっており、進軍を急ぐのは黒羊から鄴へ進路を変えてからであり、それまで過度の緊張感を出すべきではなく、いつもの戦と変わらぬ気配を装わなくてはならない。これだけの大軍であれば敵の間者も必ず紛れ込んでいる、相手は李牧だ、戦はすでに始まっていると忠告する。

黒羊までおよそ五日の秦軍兵糧中継地金安には軍より先行する兵糧運搬の中にまで間者は入っていた。趙は秦軍の兵糧の流れをしっかり掴んでおり、兵数は二十万前後であり、そこから三軍全て一度黒羊に入り、そこから三軍同時展開してくると舜水樹は判断し、李牧に伝令を走らす。
しかし、三ヶ月前に作られた金安城内の極秘地下施設では集めた兵糧を一度出し、土と材木で重さを合わせた偽装俵が大量に作られていたのであった。趙の目が追っていた金安から黒羊へ続く兵糧の兵站は偽物であり、実際の兵糧はこの金安に着実に集積されていた。秦軍の仕掛けはすでに始まっていたのである。




さすが昌平君。李牧が兵糧に目を向けることを予測し、その手をすでに打っているとは驚きでした。
今のところは李牧も趙西部攻略が本命と思っているでしょう。いつまでバレないのか…少しでも遅いことを祈ります。


皆さま今年一年このブログを応援して頂きありがとうございました。お陰様で無事今年も続けることができました。来年は秦対趙の苛烈なる戦いが繰り広げられるでしょうし、信の王騎の矛を振るう姿を早く見たいとも思います。
来年一年ではこの戦いは終わらないとは思いますが、様々な局面を迎えることと思います。
来年もぜひこのブログを応援頂きますようお願いいたします。

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かずお

来年も更新宜しくお願い致します。遅れても良いからね。

20万の大軍だと諜報活動が重要になり足並みが揃わないだけでも見透かされてしまうリスク。端和様も自国領を数年空けるリスクを背負っての出陣ですから、裏周りの若き三隊を知らなくても信用してるのかな?漫画設定を妄想すれば、秦との交易活性化により出生率の向上などが改善されたから数年空ける事も辞さない協力をするんだろうな〜と。

この行軍の間に騰将軍が韓滅ぼす…なんて事は無いよね?
by かずお (2016-12-28 11:00) 

キングダム楽しみです。

再度、カンキvsキスイが展開されそう。楽しみです。
by キングダム楽しみです。 (2016-12-28 14:58) 

しゅうしゅう

飛信隊は対外的には楊端和の配下に組み込まれましたね。

それにしても、楊端和、まだ若いおまけに弱王だった政の目に
どれほどの光を見出したのでしょうか。

以前どこかの話で政と楊端和はこの後、、、、みたいな下りがあったので
そのうち、楊端和は政の側室(?)の一人にもなるのでしょう。

管理人さん、1年お疲れ様でした。
by しゅうしゅう (2016-12-28 17:55) 

伊世

まだ出会って間もない頃の、信と政と貂ちゃんが出てきましたね。三人とも小さくて可愛いですね。懐かしいな〜、信がハチャメチャな男の子でしたね(今もか)。

おお、傅抵、出てくるか。今度こそ活躍するんだぞ。そして竜川にまたふっ飛ばされて退場するんだぞ。

管理人さん、一年間、お疲れ様でした。来年もプログの更新を楽しみにしています。この掲示板の皆さんの意見や感想はとても面白いです。良いお年を。

あ、そうだ。前々回の下っ端さんに返信です。私は今度の趙との戦い、連載期間は二年と半年くらいかなぁ…と思います。黒羊の戦いが一年でしたもの、今回は大軍勢ですし、どのキャラクターも見せ場があって欲しいですし…そうなると三年くらいかかってしまうかな?来年も楽しみが続きますね。
by 伊世 (2016-12-28 22:55) 

総大将・王翦

〝王都の守護神〟と呼ばれし扈輒を西部戦線に配置した事を後に李牧は後悔する事になるのだろうか…はたまた扈輒自身が邯鄲から鄴にかけての連合軍の不穏な動きを察知し、独断でいち早く鄴を固守する展開になるのか?いずれにしても手に汗握る展開になりそう。

序盤であの李牧をどこまで欺けるか…仮に欺けたとて彼に備えがないという事が到底考えられないし、何より蕞攻略戦の時の様に一部の身内にしか〝真の意図〟を知らせない得意の〝情報戦〟で王翦と激しい火花を散らすかもしれない。

流れ的には桓騎対紀彗の再戦が実現する可能性は高いと思う。桓騎は紀彗の弱点を黒羊において十分理解したが、紀彗も李牧らから桓騎の〝弱点〟を聞く事になるだろうからこちらも目が離せない展開になると思う。

後は・・・今回楊端和の下に飛信隊が付くと。となると桓騎・蒙恬、王翦・王賁の可能性もあるという事か…だが王翦に関しては息子と共闘するかはやはり疑問ではある。なので逆パターンも十分考えられる。

管理人様、今年一年お疲れ様でした。
来年もよろしくお願い致します。
お粗末な予想しかできない身ですが、これからも自分なりに考えて予想していきたいと思います。
by 総大将・王翦 (2016-12-29 00:22) 

冬将軍

一年間お疲れさまでした。
物語は中盤に差し掛かる頃でしょうか??

カンキと王賁は、馬が合わなそうだと思うけど、それもどうなるか見たい組み合わせではありますね
趙の将軍達の誰が秦の誰と戦うのか、楽しみです
by 冬将軍 (2016-12-29 07:41) 

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コメント
by お名前(必須) (2016-12-31 00:11) 

先読みのシャア

楊端和はやはり、切れ者ですね。そんな楊端和の戦術と山の民の武力と飛信隊の臨機応変さと武力が合わされたら、どれだけ強くなるか、非常に楽しみですね。今回の鄴攻めで兵站を絶つ戦略がキーポイントでしたが、やはり、電光石火の鄴攻めとなり、その意味での李牧を序盤に欺くのは成功しそうですね。しかし、鄴を速攻で落としたとしても、兵糧がないと、すぐに奪還されてしまいます。金安城内に山と積まれた兵糧をどう鄴へ運び込むのかが問題となり、その攻防がどう描かれるか、気になります。

管理人様、御苦労様でした、又、来年も頑張って下さい。このブログを見てる方々も皆様、良い年を。
by 先読みのシャア (2016-12-31 02:25) 

ハルト

扈輒や紀彗を呼んで、鄴攻めに気付いた李牧がどう対処するのか。趙との対戦ですし、来年ずっと続くんでしょうね。

今年もブログ運営お疲れ様でした。毎週楽しみにしていますが、管理人様のペースで無理のないよう、お身体ご自愛ください。
来年も楽しみにしています。
by ハルト (2016-12-31 21:51) 

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