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第490話 宿命の舌戦

秦斉対談で思いもよらぬ大収穫をあげたものの、その余韻に浸る間もなく、政は玉座に着き、李牧と相対する。
政と李牧はしばらくお互い目を合わせていた。先に李牧が口を開き、挨拶をしようとすると政はそれを遮り、無用な前置きはいらぬとし、何の目的で自ら咸陽まで乗り込んできたかと問い詰める。その政の礼を欠いた様子に介億は違和感を感じていた。しかし、昌文君はそのくらいでちょうど良いと考えており、黒羊戦終えて間もない敵国王都に宰相自ら乗り込んでくるとは非常識であると感じていた。
李牧は歓迎されていないのは百も承知であるが、間に合う内に政に上奏したことがあって、参上したと説明する。それは中華統一の夢を諦めて頂きたいというものであった。李牧は邯鄲で生まれた不幸をはねのけ、秦の玉座につき、蕞では自ら死地に入り、民兵を奮わせ奇跡を起こした政に心から尊敬していると伝える。そして、政はこの世から戦争を無くすために国を一つにしようと志されている、本当なら政のような王に仕えたかったと言い、しかし、仕えていたのであれば中華統一を全力で止めていたと断言する。それは国の存亡に関わる最終局面に近づく時、その国は想像以上の力を発揮してくる、その力の大きさは合従軍をはねのけた秦が一番理解しているはずであり、その先は血で血を洗う凄惨な戦いが待っているのである。統一後の理想の世などそこで倒れていくものたちの何の慰みのなるのか、流れる血も大量の死も紛れもなく悲劇である。李牧自身も常日頃から戦の根絶を心から願う者であり、他の五国にも同じ考えを持つ者たちがいるはずてあるため、剣を交えるのではなく、手を取り合うべきであると提言するが、昌平君は統一以外に道はないと切り捨てる。
李牧は昌平君に対し、あると反論し、政に今すぐ六国に伝文を送り、王たちを咸陽に集結させてくださいと進言する。政は盟かと聞くと李牧は肯定する。
七国同盟とし、目的は中華の恒久平和であり、守るべき盟約は他国との戦争を一切禁止であり、禁を侵す国があった場合は速やかに残りの六国でその一国を攻め滅ぼすというものであった。この盟の縛りに七王全員が刻印さえすれば無益な血を流さずとも中華から戦はなくなりますと懇請する。
しかし、政はそんなものではなくらならないと豪語する。確かに政と李牧が知恵を出し合い、他の王を説得すればこの中華から戦は消えるであろうが、百年後、政も李牧もいなくなった中華七国がその盟を守っているという保証がどこにある、時の流れとともにいずれかの国が邪な考えを持った時に盟など簡単に砕けてしまう、そんな不完全なものを残して平和を成したというのか、根本を変えるしかないのだと言うと李牧は綺麗な言葉にすりかえればそれですむと思っているのか、理想のためにすりつぶれろという暴論を六国が受け止めると思っているのかと激しく李牧が反論する。政はこの戦で中華全土が悲劇を覆うのは百も承知であるが、それをやる、綺麗事など言うつもりはない、よく聞け李牧と趙の臣達よ、秦は武力を以って趙を含む六国全てを攻め滅ぼし、中華を統一する、お前達は今すぐ発ち帰り、趙王に完全降伏を上奏するがいいと宣戦布告する。
李牧は残念ですがしかと承りました、しかし、最後に後悔するのは秦国ですよと釘をさす。



この舌戦で秦と趙は決裂しましたね。中華統一の最大の障壁となる李牧をどう攻略するか楽しみですね

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王翦

「七国同盟」か…確かにシンプルで解り易いが筆者はやはり政の信念に一票だな。

中華の未来を考えるならば↑の同盟とやらはいずれは形骸化するだろうし、政の言う「根本の変化」を成す為には武力統一は不可避なんだろう。

今やあの李牧相手に一歩も退かず白熱した舌戦を繰り広げた政は、確実に王者の階段を上がっているのが伝わった。

さて、政の確固たる〝宣戦布告〟を受けた李牧は如何にして秦を牽制するかだが、考えるに合従軍の結成は至難として「秦の暴論」を防ぐ一環として他国と密に連携し、今まで以上にお互いの国をかばい合う形で秦の攻勢に備えるのかと思う(まぁハズれるだろうが笑)
by 王翦 (2016-09-29 10:12) 

名もなき飛信隊員

李牧の提案はいわば規模は小さいけれどいまの国連みたいな組織の提案といったとこでしょうか。
500年も争っているのですから七国同盟が成ったとしてもそれは今の秦と李牧が脅威であるからこそ成立する同盟は間違いなく第2次世界大戦のイタリア・ドイツ・日本のように考える国が裏切りさらに大きな戦争がおきるのでしょうね。
李牧がこのような提案するとは驚きました。
蕞では政の情報封鎖にやられてしまいましたから政ならびに秦の内情を探りに自ら乗り込んで来たと思っていました。
交渉は決裂しましたからこれで李牧は容赦なく秦を叩きにくるでしょう。統一戦最初の山場ですからどのような結末になるか楽しみにしています。
キングダムの李牧程の人物ですから史実とは違った結末もありだと思ってます。
そろそろ信のほうもどうしてるか気になります。来週出てくるのに期待してます。
by 名もなき飛信隊員 (2016-09-29 10:34) 

かずお

何からしくない李牧の謁見。今までの行動には何らかの成果を齎す筈でしたが、今回はただ決裂。謁見が目的ではなく別目的があるような気がして…例えば慶舎を倒した信将軍に面会を求めるとか。李牧からしたら三大天筆頭候補だった慶舎を倒したのだから、信は将軍に昇格!と思うと。しかし周りの反応が苦々しい空気で将軍昇格見送りを知る。李牧は慶舎の首は安くない!と反論しても昇格見送りの事実…信念を貫く信…に笑顔になりそう。

李牧の目的って慶舎越えを果たした信を確認したかったのが一番の目的なのかな?と推測しちゃいます。将来の最大の壁は信と見込んでますから。当然外れる推測ですよ。
by かずお (2016-09-29 19:27) 

先読みのシャア

李牧がまるで、ガキの使い扱いでしたね。でも、当の李牧もこの展開を予測してた様な感じでした。七国同盟は無理があると思います。国連の例えはまさにピッタリです。私も交渉は上手く行かず、宣戦布告と思ってましたが、李牧がやけにあっさりしてますね。何か別の狙いがあるのでしょう。それは、桓騎の事ではないかと思うのですが・・・
桓騎の弱点を見切っているから、戦えば必ず勝てる。だから、まずは桓騎を総大将に据えて貰う必要がある。そして、戦った後、桓騎を討てれば問題ないですが、もし討ち損ねた場合、そのまた次の戦いでは、弱点が無くなり、残虐性のある桓騎ほど、厄介な相手は居ないと思います。
だから、例え討ち漏らせても、二度と趙に刃を向けられぬ様に、抹殺出来る手を打つのでは。(自分が李牧なら、そう仕向ける)
やっぱり、李牧は1くせも、2くせもある相手でないと・・・
このままでは、李牧らしくない。
by 先読みのシャア (2016-09-29 22:28) 

ヒョウコウ兵

リボクの立場からしたら、どうせ秦と敵対するなら、政に宣戦布告してもらった方が今後動き易いのでは(趙でも対外関係でも信用がまだ)。 七国同盟も本気だったかもしれないが、提案に乗ってくれたら良!くらいかと。

そもそも政の中華統一自体、公式じゃないような。狙ってることは分かる人には分かる位だったはず。秦国内の反発も狙ってくると予想します。
by ヒョウコウ兵 (2016-09-30 05:14) 

伊世

今夜の「歴史秘話ヒストリア」、始皇帝のお話でした。皆さんもご覧になりました?ほんのちょっとだけ、アニメ「キングダム」の場面が出ました。懐かしいですね、あの頃は信は武功を挙げようと必死になっていて(今もそうだけれど)、政は呂氏派と争っていたのですね。政は今や立派に成人して、呂不偉から政権も奪還して、中華を統一しようとしています。イバラの道だけれど、政、頑張れ!
by 伊世 (2016-09-30 21:00) 

かい

秦の結末を知っている現代人からすれば、李牧のほうが正しいなあという印象を読者に植え付けたかったのかしら?
作者は李牧大好きだから、そんな感じがしました。
by かい (2016-09-30 22:56) 

しゅうしゅう

秦と趙は宣戦布告が必要な状態ではなく、今は休戦状態というのか、そんな感じ。

そんなところによく李牧乗り込んできましたね。
ただ、政には、李牧にわざわざ中華統一の話をする必要性があったのかは考えさせられました。

以前、李牧との対面の時はあえて愚者の役を演じたとか言っていましたけど、今回は
無用な発言がいくつかあったのかと。

沈黙は金。ただ、漫画の絵的には盛り上がらないんですけどね。
by しゅうしゅう (2016-10-01 00:55) 

ギャラクティカファントム

お互いの意見の応酬は面白かったんですが、なんか、政の顔の表情と言うか目の描き方にダークサイドっぽい影がかってる様な気がしました。

まだ早いか。
by ギャラクティカファントム (2016-10-01 10:17) 

昭王

改めて、呂不韋の大きさを感じている。

李斯、昌平君、蒙武、蔡沢を従えてもし、政が王でなかったら本当に玉座を奪うことも出来たかもしれない。

そして、本当に金の力で秦を中心に中華を束ねたかもしれない。

しかし、呂不韋に勝った政の方が大きい。

呂不韋、李牧とも政は器が違う。大きい。

今回、2人との舌戦で改めて器の大きさを感じた。

政のような王だからこそ中華統一も成し遂げられるのだと思う。

その政がまだ幼い頃から、政を見抜いて支えてきた昌文君にも賛辞を送りたい。
by 昭王 (2016-10-02 16:32) 

TO

この先の中華の歴史を考えると政のいう中華統一も不完全なものでしかないです。
時がたてば中央政府が腐敗し、地方政府は力を付けて分裂し、統一されてもまた分裂するの繰り返しです。
秦に滅ぼされた国の人間だって漢の時代でもその怨嗟が残っていたりしますし。(例、呉楚七国の乱)
by TO (2017-11-27 21:32) 

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