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第424話 夢のような国

若き日の呂不韋は師と呼んでいた人物と意見を交わしていた。師は自分達が届けた武器で殺し合いが行われている光景を見て、呂不韋に対し、たまらぬなと呟く。師は戦こそ正に人の愚行の極みであると言うが、呂不韋はそれもまた人の営みの一部であると考え、それよりも武器商が儲かることに興味を抱いていた。しかし、師は今回武器を流したのは火急に大金が必要であったためであり、節度のある商人として、武器に手を出してはならぬと諌める。目の前で人が死んでいく様を見て、あの戦いで利を手にするのは戦っている張本人ではなく、国の中枢の人間たちであり、戦いとは虚しいものと師は感じていた。呂不韋は虚しくはないが、愚かであると考えていた。呂不韋は軍資金があるならもっと別の楽な方法で戦で勝つよりも多くのものを手にできる、人が手に入れた最強の武器は剣や槍ではなく、金であり、金を使い、人の欲望を操り、国を大きくすると言い、並み居る商人の頂点に登りつめ、全てを手に入れると断言する。

呂不韋は相対した政に対し、貨幣制度が天下を作ったのであり、金が人の欲を増幅させたと話す。千年以上前、貨幣制度の誕生により物々交換であった世界は一変し、運搬しやすく腐らぬ貨幣は物流に距離を与え、散在していた社会を次々と広げた。しかし、金のもたらした最大の発見は裕福の尺度であり、他人と裕福度を比較する物差しを手にしてしまったのである。当然生まれたのは他より多くを得たいという強烈な我欲であり、それから千年は中華という広大で複雑な世界へと進化したのである。そして、人は天下という言葉を口にしだす。かつての世は「天」の恩恵を預かる世界、「下」はあまねく天に支配されるものであったが、天の下が中華となり、それは人間がその手で支配できるのではと思わせるものへと変わったと語った。
政はまるで金が全てのようなもの言いだと言うが、呂不韋はそうであると断言する。政は呂不韋が王となれば人の我欲を至上とする醜悪な世になると言い切ると呂不韋は戦争を第一手段とする世の中よりはるかにマシと反論する。為政者は国民に血を流させるのではなく、国により多くの幸福をもたらす者であらねばなりませぬと諭す。理想を掲げて国を治めようとする政に対し、呂不韋は金を操って国を治めようとしたのである。
蔡沢は呂不韋に対し、金でどう国を治めるか問うと全実権を呂不韋に委ねるのであれば十年で秦を中華史上最も富に満ちた国に成長させ、物があふれかえり、飢えなど無縁の世界にし、秦人全員が人生を楽しみ、謳歌する国を作ると言う。蔡沢はまるで夢のような国だが、それを乱世が許すのかと問うと乱世だからこそと断言する。秦が溢れるばかりの富を示せば他国の人間は必ず羨ましがり、秦に流れてくる、他国の王がそれに危機を感じるなら、富を分け与え、手を握る。刃ではなく富を交わらせて関係を築いていき、中華全体の経済を秦を中心とした発展にするとし、暴力ではなく、豊かさで全体を包み込む、それが呂不韋の考える正しい中華の統治であった。つぶして従えるという蛮行は争乱の世こそ大国が見せてはならぬ姿であり、暴力で征服し尽くす中華統一は以ての他である、国が一つになれば国家間の争いがなくなるが、それは勝利する側の身勝手な夢の押し付けにしかならなく、敗北国には秦への怨念しか残らない、それこそ未曾有の闇に包まれる。自国民にも多大な犠牲を強いるやり方は狂気の沙汰であり、それでも中華統一が王の道として揺るがぬというのであれば、大王は誰よりも玉座にあってはならぬ人間だと豪語する。




呂不韋の自論は最もだと思ってしまいました。確かに国が裕福になれば幸せと感じるようになるでしょうし、満足感があれば他国から奪おうとも考えないため、戦争がなくなっていく、国という形こそ残れど平和な世になる。
しかし、そんなに未来永劫に富が続くとは到底思えないし、呂不韋が出来ても呂不韋亡き後は再び乱世に戻るような気がしますが、、、でも目指す方向は非常に良いのではないかと思っちゃいました。
来週政がどう呂不韋を論破するか楽しみです!!この場を正面から切り抜けてこそ、中華の王だと思うので、期待してます。
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クリリン

冒頭の若き日の呂不韋と師との会話を読んでいて「この人やっぱり若い時から野心家で貪欲なんだなぁ」と思いました。それから政との舌戦ですが、確かに呂不韋の言う金を操作した上での正しい「中華の統治」という事ですが、一理無くもないですね…しかし、個人的には政の「覇道」こそがこの広大な中華を統べるにふさわしい方策だと思います。今現実的に各国のあちこちで大小様々な戦が繰り広げられる中で、果たして呂不韋の言う様に「金と人の欲望」だけで人心がなびくとは到底考えられないです。商人としての意見としては一流でしょうが、国主・軍人から見ればそれも理想論でしょう。要するに呂不韋の統治方は天下統一が成ってから行っても問題無いものと考えます。
by クリリン (2015-03-19 07:05) 

ベジータ

今回の内容や今回の戦闘については躍動感や面白味を感じません。ゆっくり進めていく内容ではないと思うのですが。
by ベジータ (2015-03-19 18:27) 

N村

富と豊かさではローマにはるかに勝っていたカルタゴは滅び、ローマが地中海世界を見事に統治しました。それは決して闇の世界ではなく、人類の黄金時代の一つとも言えるほどでした。
 この事実が呂不韋を論破していると思うけど、政はそのことも知らないだろうしな~ どう論破するのか?
 非常に楽しみやね
by N村 (2015-03-19 23:09) 

NO NAME

その考えは植民地支配した国の考えだよね。
実際秦はあっさり潰れたし、
支配された国の恨みは変わらないし、
その後うまく統治できたとしても、
その前に国を滅ぼすという鬼畜の所業を続けるのですか?ということ。
by NO NAME (2015-03-19 23:58) 

チェキ

リョフイの思想は儒家、道家、法家などの当時の主流と違う様ですね
どちらかと言うと共産主義に近いのかな?
戦争は外交手段の一つなので
基本的には政の方が間違ってるんでしょう
でも始皇帝の偉業は中華の形を二千年維持した中央集権法治国家の基礎を作ったこと
金と言う目先の利しか見ないリョフイとの対戦をどう描くのか楽しみです
by チェキ (2015-03-20 03:45) 

K

呂不韋が目指す天下が、二千年後の「戦後日本」と重なって見えてしまった。しかしアメリカの軍事力という担保があったからこそ日本は経済に専心することができたわけで、その担保が揺らげばいつまでも経済に専心することもできぬ。

作者は呂不韋と政の論戦の形を装って「戦後日本」の限界を語らせるつもり?…というのは深読みのしすぎか。
by K (2015-03-20 21:42) 

通りすがり

呂不緯の後ろの柱にいる者は誰なんでしょうかね?
政は誰かがいることに気づいたみたいですが…
by 通りすがり (2015-03-21 01:27) 

徐福

柱に8本の指が。。わざわざ2カットで強調
。。政を狙う刺客?それとも?

ポスト呂不韋の「燕太子丹質於秦 秦王遇之無禮」
のシーンかな?

多くの読者は信の将軍昇格シーンを待ち焦がれて
いるのですが?

by 徐福 (2015-03-21 06:28) 

イケヌマ

指の件ですが人が隠れられる柱の大きさでもなかったので多分幽霊っぽいですね
by イケヌマ (2015-03-22 20:39) 

とある羌瘣

通貨のことは筋が通ってるが
それを元に争いが起こるのも確か
政は国境を無くすことが目的であり
それで争いを無くそうとしている
今後続く争いを無くす為にも…

あの指は刺客だとしたら政をかばって誰かが死ぬフラグ??昔の話をして母の心に響き母が息子かばっちゃうのかな
それともリョフイを襲いシキ身代わりパターン??
それともリョフイ亡きあとの重大人物登場??
まさかの同盟のときみたいにてんが刺客??
by とある羌瘣 (2015-03-23 09:25) 

コアラ

あの指は、おそらく政が9歳の時に趙で人質として捕らわれていた時の、長平の怨念の亡霊でしょうね!
政が呂不韋の意見に対して微塵も動じる事はないはずですが、一瞬汗を流したのは、またあの時の亡霊が秦王にはなれないと告げに現れたんでしょう!
by コアラ (2015-03-24 11:42) 

何か無茶苦茶

今まで暗殺やら反乱やら手段を選ばず権力を手にしてきたくせに、消える前になると綺麗ごと言いだすって漫画の常套手段だけど、あまりにもキャラがブレ過ぎててワロタ。
by 何か無茶苦茶 (2015-03-24 11:51) 

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来週でんゆ死にます
by お名前(必須) (2015-03-25 18:09) 

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