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第527話 橑陽の牙

早くも両翼の熱戦が展開する李牧と王翦の朱海平原の戦い。その地より南西に約三百里ではもう一つ重要な戦いが同時進行していた。山界の王楊端和軍対橑陽軍の戦いである。

壁は山の民の戦いぶりを見て、その強さに驚きを隠せないでいた。壁の援軍一万が加わらずとも山の民五万で九万の敵を圧倒していたのだ。しかし、楊端和は趙軍の戦い方が単調であるため、何か狙っているかも知れなく、流れ次第ではすぐに壁に出陣してもらうと話す。
そこに少数の騎馬が楊端和本軍の前を通る。その騎馬は舜水樹が率いており、山の民の亡骸を引き摺っていた。そして、舜水樹の合図と共に遺体に矛が突き刺さる。さらに舜水樹は楊端和を指差し、挑発する。それを見た山の民は怒り、舜水樹の後を追う。公孫龍は顔に似合わず派手な登場だとし、迎えの隊を送る。山の民の陣では楊端和はしっかり顔を覚えたぞと怒りを露わにする。

舜水樹は趙本陣で全軍退却を指示する。舜水樹は戦いで勝つにせよ、奴らを深く引き込み、一人残らず息の根を止めたいと考えていた。懸念としてはここで討ちもらした残兵が李牧の朱海平原に流れることであった。公孫龍はどこまで後退をと尋ねると舜水樹は橑陽城までだと返す。公孫龍はそこには厄介な…と焦るが、舜水樹はそのまさかであり、橑陽の牙で秦軍を引き裂くと断言する。

山の民と戦っていた趙軍は全軍退却を開始した。山の民は不自然な退却に素直に追って大丈夫かと楊端和に聞くと追わずに視界から消えられ、軍を分けて鄴に行かれる方が厄介だと返す。壁は敵の意図はともかく、兵糧攻めしている秦軍の目的は鄴に敵を近づけぬことであり、後ろに追い込むことは鄴から遠ざけることで、好都合と考えた。しかし、それを聞いた山の民はそれ故不気味だと気付かせる。楊端和は退がる理由としてはこの先に趙に有利な戦場があるのか、強力な援軍が待っているかのどちらかだと話す。

趙軍では公孫龍が舜水樹に本気で橑陽城をこの戦いに巻き込むのかと尋ねる。舜水樹はそれに答えず、他の部下がさっきの橑陽の牙とは何かと尋ねる。舜水樹はここにいる軍は橑陽軍であるが、橑陽一帯の城から集められたもので、真の橑陽城の兵ではないとし、橑陽城には趙人とは異なる人種の人間が巣食っているのだと説明する。

楊端和は橑陽城まで来ると全軍停止、敵の突撃に備えよと支持する。それは犬戎であった。橑陽には中華の周王朝をその手で滅ぼした大犬戎族の末裔が城を占拠していたのだ。




犬戎族ですが、たぶん趙にとっては厄介な存在なんでしょう。それを秦軍にぶつけるとは毒をもって毒を制すようなものなのでしょう。山の民は犬戎族と趙軍九万を相手にするという非常に苦しい戦いになってきましたね…
ちなみに舜水樹の挑発は楊端和に橑陽まで確実に追って来させる以外にも何か意図があるのでしょうか…謎ですね。

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コメント 8

総大将・王翦

舜水樹…随分大胆な男だな。あの楊端和に対して「次はお前だ」と言わんばかりの意思表示。おまけに武勇も馬南慈程ではないにしても亡き慶舎を彷彿とさせるものがある。

李牧も言っていた〝橑陽に巣食う〟の真相は当時の王朝・周を一時的でも駆逐し、滅ぼした犬戎の末裔とは・・これは厄介な戦になる事必定だろう。万一勝利したとして一早く鄴に向かえるのかも心配だし、それとも朱海平原における攻防を制したいずれかの部隊を極秘裏に橑陽に差し向ける事もあるのだろうか?と考える回だった。
by 総大将・王翦 (2017-08-17 08:36) 

N村

 キングダムの時代よりもさらに昔、犬戎(西戎)を討伐して、秦は周から諸侯の位を得たそうです。

 歴史的に、秦とはまさに犬猿の仲のようです。
 
 先祖達が討伐した部族の末裔に、負けてほしくないですね。いっそのこと、瞬殺でいっちゃって欲しいところです。
 あ、でも秦の部隊は、壁の部隊1万のみで、あとは犬戎と同じ秦にとっては異民族の山民族がメインの相手ですね。
 おそらく山民族と犬戎の居住地は近かったと思われるので、何か犬戎の弱点とかも山民族達は知っているのではないでしょうかね。


 あと、犬戎の部隊の恰好を見て、某ベルセ○クというマンガの、ワイアルドを思い出しました(エンジョイ&エキサイティングのアニメ化される度に、いつもカットされる使徒です)
by N村 (2017-08-17 16:17) 

とおりすがる

先に書かれてしまいましたが、
犬戎族ってどう見ても黒犬騎士団ですね。
格好といい、
見方の軍からも厄介だと思われている事といい・・・。
名前も犬繋がりですね。
もしかすると、
大将がワイアルドに激似かもしれませんw
by とおりすがる (2017-08-17 20:58) 

霊鳳

犬戎、燕の劇辛将軍の部隊「毒犬」でも出てきましたよね?機動力が凄い、という描写でしたが今回はどうなるか。
最近、李牧が策を巡らす描写が無いのが寂しいです!
by 霊鳳 (2017-08-17 22:48) 

先読みのシャア

展開が目まぐるしいですね、こういうのも面白い。
舜水樹は度胸も武力も有りそうですね。しかし、知略が少し劣る様に思えます。知略があるなら、いきなり奥の手の犬戎を使ったりしないでしょう。
犬戎は武力は有りそうだが、趙に置いても厄介とあるように、制御出来るのか、疑問です。
山の民の武力も凄いですが、犬戎が上回るのではないかと思います。でも、楊端和は羌瘣並に頭がキレる。だから、戦術で対抗すると思います。壁を囮に使い、犬戎と趙軍に挟み撃ちされる様に誘導し、寸前に交わさせ、犬戎と趙軍をぶつけるとか。犬戎からすれば、趙軍も敵。双方潰しあった所を、山の民がまとめて撃ってしまうとか。
犬戎を趙が利用するのでなく、裏をかいて、秦が利用する展開が最高です。
さて、どう展開するかですね。
by 先読みのシャア (2017-08-17 22:57) 

お名前(必須)

まぁでもそんなヤバイ制御不能な輩が居て趙は良く無事でしたね。たいした事無いんじゃない(笑)
by お名前(必須) (2017-08-18 00:45) 

かずお

燕の将軍だった劇辛将軍…やっぱ凄い大将軍だったんだ。李牧も犬戒との直接対決は避けて最短で勝負を決めにきましたからね。タラレバですが李牧を追い詰めてホウケンとの直接対決を避けていたら劇辛は李牧を仕留めれたんだ。流動も使えない状況で、燕将軍劇辛の首しか狙ってない戦いでしたからね。オルド将軍もそうだけど犬戒族と上手く連携する燕軍って侮れないっす。趙軍は…腫物?扱い。きっと有る程度の独立自治権を与えて落ち着かせるしかないんだろうね。

趙の守備将軍の部隊…九万いるが、寄せ集めだと評価身内から評価。数は有利でも質で負けていると自覚していたんだなぁ。持久戦に持ち込むのがベストと知りながら他策にも対応。実務派だね〜。

楊端和様、初めて怒りに近い表情を見せました。が、怒りと冷静を兼ね備えてます。エンジョイ&エキサイティング隊を見てどう動くのか楽しみです。
by かずお (2017-08-18 10:06) 

しゅうしゅう

前回久しぶりに信が登場して、連載の連休明けから
むっちゃ活躍すると思わせておいて、
違う地域の戦端を取り上げてきましたか。

舜水樹が決戦の場所として選んだ城の部族達は
秦軍を敵としてみなすんですかね?

かえって、超軍を敵とみなしたりして。



by しゅうしゅう (2017-08-20 00:52) 

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