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第483話 勝敗の夜ふけ

時は黒羊戦の五日目の午後に遡る。飛信隊は丘の麓で兵を待機させていた。桓騎からは丘を占拠した趙軍が桓騎軍を追って降りるので、その間に丘を奪取するよう命令が下っていた。
信はそんなにことが上手くいくかと反発していたが、眼前に紀彗が丘を駆け下りていく様を見て、唖然とする。この時、丘を占拠していた趙軍のおよそ半分を占める紀彗軍が下へ降り、丘を後にした。一方金毛、岳嬰率いる慶舎軍は丘に留まり、徹底抗戦の構えを示す。それに対し、樹海内に伏していた桓騎兵が続々と丘に攻め上がったのだ。
序盤高低差と砦を盾に趙軍が大いにこれを返り討ったが、最終的には砦を突破したゼノウ一家と飛信隊の前に敗れ去ったのである。

信は趙軍が続々と丘から降りていくのを目にする。岳嬰は最期まで戦うことを宣言するが、金毛はここで死ねば負け犬で終わるだけであり、慶舎の仇を取るためにもここで退くべきだと説得する。
そして、金毛は黒羊からの完全撤退を決め、秦軍の完全勝利となった。

一方、桓騎は紀彗軍が丘を降りて追ってきたことを確認すると十分引きつけて、そこから戦わずに分散し、四方へ逃走した。紀彗は分裂したいくつかの桓騎軍の小隊を討ち、そのまま離眼城へ入った。
そして、桓騎は再び黒羊に戻り、すでに桓騎軍が占拠した中央丘にゆっくりと登頂したのである。


河了貂は那貴と戦の全容を解明していた。黒羊戦四日目、飛信隊が慶舎を討とうとしていた頃、桓騎はすでに標的を慶舎から紀彗に移しており、特別拷問をしていた離眼兵から紀彗の過去をすべて聞き出していた。そして、紀彗と離眼の関係を知った桓騎は丘取り合戦を止めて、趙軍に明け渡す。
趙軍に丘の砦を進めさせる一方で、黒羊の村焼きを行い、一般人の死体を集め、死体を紀彗に見せて、離眼を同じ目に合わせるぞと脅した。その結果、紀彗は丘を捨て、離眼救出に向かい、趙軍は破れたのである。
戦争四日目で大局も動き、どう丘を攻略するか軍略家なら前のめりになるところで、桓騎は丘ではなく、紀彗一人を的にして、戦いを切り替えたのである。そして、村人達の死体を必殺の武器として、紀彗の弱点をえぐり、丘から引きずり降ろして、黒羊戦を勝利に導いた。
河了貂は全容を明らかにしたところで、こんな勝ち方は昌平君でも李牧でも真似はできないとし、紀彗が離眼のために戦を放棄するかは賭けであり、戦は遊びではないと怒り、戸惑う。
那貴はだが真似できない分、圧勝劇も桓騎ならではとは話す。丘は獲ってからの砦化も難題であっが、桓騎は趙軍にそれをやらせて、完成に近い形で手に入れたのだ。そして、消耗戦になるはずの丘取り合戦を止めたお陰で、戦死者の数は開戦前の予想の半分以下であったのだ。





桓騎の恐ろしさを改めて感じた一戦でしたね。被害を最小限に抑え、砦化の仕事は敵にやらせる。
しかし、飛信隊が慶舎を討ち取ってなかったらと考えても、兵の半分がいなくなってしまったら、いくら慶舎でも丘を守りきれなかったのだろうとも思います。
黒羊を手に入れた秦はこれからどう軍略を描くのか、気になりますね。

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