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第456話 副長の責任

河了貂が描いた攻略絵図は渕さん達が激流の場所を対岸まで渡り、その足で凹地の右端の敵の背を打ち、それにより、信達が右岸に上陸、一気に岸を制圧し、後続の渡河の道を確保するというものであった。
我呂はその作戦を聞いた際、一手目の激流地の渡河が全てであり、そんな大役を渕副長に任せて大丈夫なのかと河了貂に問う。そんな場面を渕さんは命を削られるような激流を渡りながら、思い返していた。そして、我呂の言う通り、自分には荷が重いと感じていた。これだけ成長進化した飛信隊の副長を自らがまだ務めていてよいのかという疑問を感じていたのだ。渕さんはもともと武人ではなく、王宮と信の連絡係であり、ひょんなことから王騎の城に行ったことにより、無国籍地帯平定の補佐をしただけであり、その流れで結成当初の飛信隊の副長になったのだ。最初は楽しく、信の補佐をできることが嬉しかったが、隊がふくれ、生粋の武人楚水が加入、副長になり、軍師には河了貂、もう一人の副長羌瘣は将軍の座すら狙える傑物であり、そんな中、渕さんの役割は小さく、大した武力、知力もないため、副長という席に釣り合っていないと感じていた。これ以上飛信隊が上を行くならば、渕さんの器ではとてもついていけず、身を弁えて、引こうとしたのであるが、信は我呂が渕さんの実力を疑った際、新参が知ったような口を叩くなと怒りを露わにし、河了貂もこれが正しい人選だと言い切る。河了貂はこの渡河に武力も知略も必要ないとし、信と河了貂は必要なものは責任感であると言い切ったのだ。それは渕さんが誰よりも強く持っているものであった。信は渕さんはたった百人から始まり、結成七年目を迎えた隊を当初から副長を務めている、信頼を置けるのは武力、知力だけでないと豪語する。
渕さんは厳しい渡河を続けている最中、そのことを考えていた。水が容赦なく、口に入り、苦しく咳き込んでも綱は絶対に離さなかった。渕さんは信はアホそうに見えて、意外と策士だと思っていた。それは信に信頼を置けると言われたら、成し遂げぬわけにはいかなかったからだ。信や羌瘣みたいな化け物ではない渕さんだから見せられる背中もあったのだ。

信達の渡河は趙軍の格好の矢の的になっていた。盾もヒビが入り、限界に近い状態に陥っていた。しかし、趙の矢は途切れずどんどん打ち込まれる。我呂は限界であり、一旦下がろうとするが、信はそれを却下する。
その時、趙軍の右岸の隊が渕さんの奇襲を受ける。



信頼を置けるのは武力、知力だけでなく、責任感もあるというのはなかなか深いですね。
偶然ではありますが、先週の特別企画のブログで自分が新しい国の王になるとしたら、部下を五人誰を選ぶというので、丞相に昌文君としました。それは一番信頼できるからとしましたが、その背景としては絶対的な忠誠と責任感だからだと、今週の渕さんをみて、改めて思いました。
また、信や羌瘣がやってしまうものは他の隊員からすると異次元のものに感じてしまうかもしれませんが、渕さんがやるからこそ、ついていこうとする気持ちは十分にわかります。やはりこれからの飛信隊にも渕さんは絶対に必要ですね。

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