第495話 相応の覚悟

大王が座する宮殿に鳴る鋭き足音。李斯は大王の前に現れ、元呂氏四柱が李斯参上しましたと挨拶をする。宮殿内は突然の出来事に驚き、連れてきた昌文君に文官達は詰め寄る。昌文君は独断で動いたものの、大王の了承は得ていると弁明する。文官達は李斯は呂氏の下で最も暗躍した男であり、大王陣営にも相当の犠牲が出ていることから、許すわけにはいかないと怒号が飛ぶが、李斯は中華統一の話を聞き、統一後に制定される法に着手できるのは中華の中でも李斯か韓非子くらいだと言い放つ。

政は立ち上がり、皆の気持ちは良くわかる、だが統一後の法は統一行為そのものの意義を形として全中華の民に示すものであり、それ程重大な法作りの前にかつての因縁は微々たるものである、政争での恨みを抱いたのはお互い様で、その時期は過ぎた、誠に秦一丸となって立ち向かわなければ中華統一の宿願は形も残らず崩れ去ると力強く説き伏せると、文官達は政の言葉に呼応する。介億は政の判断を英断であり、李斯の力はこれからの秦に必ず必要になると発言する。介億は昌文君によくぞ動いてくれた、同じ呂氏陣営にいた昌平君が李斯を推すと疑心を抱かれるため、何も出来なかったと背景を語る。昌文君は蔡沢の導きだと返した。

李斯は自分の話はこのくらいで、昌平君が珍しく重い問題を抱えている顔をしていると指摘する。昌平君は政に人払いをお願いし、二人きりで相談したいと依頼する。

政と昌平君が二人きりになる。

二人の前には地図が置かれていた。

政は昌平君に他に聞かせられぬ問題とは何だと尋ねると昌平君は来年趙向けて大軍を発するが、李牧が陣頭指揮を執りだした趙西部からの攻略の糸口が全く見えないと状況を語る。

黒羊がその攻略の楔になるはずであったが、李牧は趙西部の広範囲で突然複数の城を築き始め、秦軍の侵攻に備え、何もないところに守りの拠点を出現させ、より複雑な防衛網を築こうとしていた。着工は前線に近い側から進められているが、後方も基礎作りははじまっていた。それは前線守備の戦いをしながら後方に防衛線を作り続けていく戦略だと語る。急造した防衛線の一つ一つは決して強固ではないと予測されるが、秦軍としては次々と生まれる防衛線に対して武力突破を繰り返さねばならなく、長期戦に持ち込まれると話す。政は何年かと聞くと昌平君は十年と返す。

昌平君は李牧も統一戦争は短期間でなければ秦の体力は持たないと気付き、あえて西部の戦いが長引くよう戦略を描いたと推測していた。相手はあの李牧であり、西の攻略は最短で十年、そこからの邯鄲攻めに数年必要となり、正攻法では十五年かけても趙国を滅せるかどうかとなり、六国制覇の夢は露と消えると言い切る。

政はバカなと落胆し、玉座に座り込む。しかし、昌平君の正攻法ではという言葉から、正攻法以外の手があるのかと昌平君に尋ねる。

昌平君は多くの犠牲が伴う奇策中の奇策が一つだけあると言う。政が尋ねると昌平君は語りだす。

趙王都邯鄲は西は太行山脈という自然の盾に守られ、南は第二の大都市鄴が黄河の岸を守るという鉄壁の囲いの中にあり、李牧は今、太行山脈より先にある趙西部の防衛に力を入れている、それは山脈が最後の砦でそこまで敵を近づけたくないからである。しかし、力を入れているということは気を取られているということでもあり、西部攻略を囮にして、南を駆け抜け、一気に邯鄲の喉元である鄴を攻め落とすとした。

鄴と邯鄲は目と鼻の先であり、策として下の下ではあるが、それほどまででなくては李牧は出し抜けないと言う。しかし、鄴を落とすことができればそこから三年で邯鄲を落とし、趙を滅ぼすことができると断言する。政は言葉を失う。昌平君は攻め入る軍は趙軍の包囲攻撃を受けるため、最悪は全滅する可能性もあるとした。

まずは昌平君の練りに練った策の弱点を突き、すぐさま行動に移した李牧はさすがというべきだと思います。それにより、昌平君は危険性の高い奇策を取らざるを得なくなってしまった。もしかしたら李牧は政と昌平君と対談し、その熱い中華への想いから、この奇策まで推測しているかもしれないし、誘い込みをしているとも考えられます。

しかし、これをやらなければ中華統一は不可能なんだよな〜圧倒的不利に加え、相手は中華最強の李牧、、、、

この布陣に戦いを挑むとしたら、やっぱり騰を総大将として、副将を蒙武かな…でもこれだと王騎をとられた戦いと同じで、今回はさらに劣勢となるから、何かダメそう…

王翦はこんな負けが確定に近い戦いで、全滅覚悟ではまともに相手と組み合わなさそうだし、、、

んー難しい…

また楊端和にお願いするか、、、

コメント 7

まず序盤に初めて韓非子という名がでた。李斯と同等の実力を持つ逸材がこれから秦とどの様な駆け引きをするのか楽しみ。

そして場面変わって昌平君の悩みだが、なるほど…これは鉄壁中の鉄壁かもしれない…流石は李牧、やはり一筋縄ではこの壁の突破は至難だろう。

そこで「常識を外した奇策」が〝囮〟と〝本軍〟を組み合わせた短期決戦という訳か（古今東西見渡せば、ハンニバルのアルプス越え・メフメト二世のコンスタンティノープル越丘作戦・エルヴィン・ロンメルのアルデンヌ奇襲作戦並の奇策かもしれない）。

しかし事が成ればその収穫も多大であろうし、大都市・鄴を橋頭堡として邯鄲を三年で陥とすのも夢ではないのだろう。後は如何にして大軍を動員させ役割分担するのか、昌平君の人選が興味深い。
by 王翦 (2016-11-02 08:49) 

誰も気が付かない、昌平君の悩みをちょっとした変化から気がつくのは長年連れ添った李斯ならではですね。

キングダムでは、韓非子はスルーしてくるかもと思っていましたけど、出てきましたね。

韓非が書いた本が韓非子だとされていますが、キングダムでは、韓非子を人と扱っているみたい。

この後どう物語に登場するのでしょう。
by しゅうしゅう (2016-11-02 16:52) 

韓非子の名前が出て来ましたね。学校の教科書で中国の春秋時代の思想家と習った覚えが…今後、登場するのでしょうか。
趙を攻めるのが難しいのなら、先に韓や魏を討つというのは出来ないのでしょうか。趙が援軍に来たらちょっと厄介かな。

『情熱大陸』見ました！原先生、黒羊の戦いを描いていましたね。もう少し早く放映してくれていても…。『機動戦士ガンダム』の音楽を仕事中に聴かれているそうです。私は何かに集中したい時は『聖闘士星矢』の音楽集を聴いています。星矢のﾃｰﾏ曲が、躍動感ｽﾋﾟｰﾄﾞ感があって好きです。『ｷﾝｸﾞﾀﾞﾑ』の音楽集もよく聴いています。信のﾃｰﾏ曲が好きで、ｱﾆﾒでの輪虎との戦いを思い出します。輪虎、強かったですよね。皆さん、集中したい時、落ち着きたい時ってどんな音楽を聴かれていますか？…話がずれてすみません。
by 伊世 (2016-11-03 14:09) 

以前に秦の全将軍を相手に戦っても相手にならいと豪語したほどの李牧。

心理戦の一面もあったのかもしれませんが、李牧の実力から、あながちハッタリとも言えないところが。。

それらを鑑みると、李牧は昌平君が正攻法の黒羊からの攻めをするとは思っておらず、鄴を攻めることも読んでいるのはないかと思います。

秦の体力がどのくらいなのかは李牧は把握しているはずなので、中華統一を目指している秦が正攻法でくるとは素人目で見ても思ってないはずだと思っています。

史実では統一がなされているところをみると今後、どう攻めを描かれるのは凄く興味があります。

鄴を攻め落とすにしても昌平君は、李牧を出し抜くために、もう一捻り、二捻り加えるのではないかと思っています。
by キングダムファン (2016-11-03 19:55) 

下の下策だから、相手が李牧だからこそ通じる奇策を提案する昌平君。あれで困った顔なんだ…ポーカーフェイスにも程がある。李牧の防衛策も隣国が自国に攻めて来ないと判断しているからこそ出来るのでしょう。仮に趙を落されると燕や魏に韓、そして斎…同盟してますが、バレてないよね？…にも飛び火します。趙こそ秦からの防衛ラインと置くなら援軍・同盟はあるにせよ侵略はリスクが大きい。だから秦側への防衛策に集中出来るのでしょうね。

秦も楚や魏の防衛ラインを疎かには出来ませんから対楚に蒙豪、韓・魏にコココ縢が外せなくなります。となれば楊端和様と桓騎、そして王パパを軸にして壁などの中堅、そして信達の若手を配分するのかな？と。

あたしゃ80sですもっぱら。
by かずお (2016-11-04 07:08) 

キングダムの今までの戦で長かったのって、合従軍で1ヶ月くらいでしたっけ？？　まぁあんまり詳しくないですが、最短で3年て相当長丁場なんすね。国対国の全面衝突だから今までとは比べ物にはならないでしょうが．．．
自分も趙以外の国の侵攻も同時に行うと思います。まぁ恐らく韓あたりでしょうかね．．？　
最後のコマで例のトリオが出てきたし、三人ともどこかの将軍について活躍するんでしょうなぁ
by 下っ端 (2016-11-05 21:01) 

１年後に趙と大きな戦になると前置きが有りましたが、その間に魏か韓との戦があると見てました。
又、外してしまいました(笑)・・・
ギョウを攻めるのに、どれだけの人員を割いて、誰を総大将にするのか気になります。
まず、黒羊丘を囮とするから、主攻並みの人物が必要です。蒙武か騰辺りを据えるべきですが、共に楚と魏への抑えなので、無いでしょうね。壁、馬仁、尚鹿の咸陽防衛部隊で、攻めるふりをさせる。
実際のギョウへは攻城戦が主となるでしょうから、攻城戦に実績のある、王翦、桓騎、揚端和の連合での大部隊で総大将は王翦。信は揚端和、王賁は王翦、蒙恬は桓騎、それぞれの下に付くのではないかと思います。そして、超短期決戦にしなければならないので、３軍別行動で周囲の城を攻略していき、ギョウで集結し攻める。(山陽攻略戦と同じ)
こんな感じでは無いでしょうか？
by 先読みのシャア (2016-11-06 02:51)