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第486話 文官達の戦い

咸陽では文官達が激論を交わしていた。
趙だけでなく、魏や楚も大軍を秦に向けていることもあり、再度合従軍が興る危険性を危惧していた。
しかし、昌平君は合従軍は興らないと断言する。四年前の合従軍は二十年間楚の宰相を務めた春申君の名の信頼と王騎、劇辛を討った李牧の名の信頼の二つが重なって興りえたものであり、すでに春申君は死去し、李牧も先の失敗の汚名返上ができていない現実と、それ以外で大掛かりな絵を描ける人物はいないからであった。さらに昌平君は自ら二度とあんなものは作らせないと豪語した。介億は国間のつながりを妨害する遊説の徒を国外に多くはなっていると発言した。
しかし、昌平君は見当たらぬといったものの、東に鎮座する人物だけは力が未知数であり、危険性を感じていたが、それは口には出さなかった。
政はそれを聞き、ならば次に刃を交える国はと問うと昌平君は趙国ですと返答する。昌平君は黒羊という楔を活かし、次が本当のとまで言うと、いきなり伝令が宮殿に入ってきて、急報を告げる。
それは蔡沢から国運に関わる知らせが伝えられる。

黒羊での引き継ぎを終え、信は蒙恬に後を任せ、出発しようとする。しかし、そこに咸陽本営からの急報が入る。
それは趙との一時休戦というものであった。伝令は理由も特に知らすこともなく、相当慌てながら各隊を回っていた。その様子を見て、蒙恬は昌平君に突発的な想定外の出来事が起きたと推測した。

そして、数日後、咸陽にものものしい警備の中、国籍不明の一旅団が到着したのであった。得体の知れない車からは予想外の人物が姿を表す。その姿は王建王と李牧と蔡沢がであったのだ。
蔡沢は一人本営に赴くと文官に囲まれ、李牧と王建王を連れてきた理由を詰問される。蔡沢は独断で動いたことを詫びるものの、段取りを踏んでいては危険度が増し、実現困難であるからだと釈明する。昌平君はなぜあの二人を連れてきたのかと問うと蔡沢は一人であると返す。
政は斉王かと言うと蔡沢はいかにもと返答し、斉王が咸陽まで来るには趙国を通らねばならず、その旨を趙に伝えたところ、無事に通す条件として、金とは別に李牧も同行し、秦王との謁見する機会をと言われたため、可として連れてきたと白状する。
周りの文官からは王をないがしろにし、大逆罪だと怒りを買うが、蔡沢はかつて東帝、西帝と中華に恐れられた時代もあった東の斉王と西の秦王が直接会って対話する意味を考えると自分の細首程度喜んで差し出すと言い切る。
蔡沢は政に最後の仕事として、列国を滅ぼさんとする王とそれを東の玉座で受けて立つであろう斉王と舌鋒をお交わし下さいと懇請する。




蔡沢の思惑はなかなか粋なものだと感じました。蔡沢は政と呂不韋の舌戦から政の中華統一の意志に心動かされたのでしょう。蔡沢は自身の年齢を考慮し、中華統一の最後まで見ることができないため、最後の敵となりうる王建王との舌戦を実際の戦いに見立てて、行く末を思うのかなと推測します。
しかし、蔡沢の言う通り、これを順序立ててやったら絶対に実現しないでしょうね。そもそも秦が中華統一を狙っていることは周知の事実ではあるものの、それを秦王が他国の王に語るとなると重みが遥かに増し、警戒される危険性が増すからであります。しかも、今回は李牧も来ちゃってますし…間違いなく蕞での一件が本当に政の力であったのかどうかを見極め、今後の対策を考案するためだと思われます。

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秦斉大王会談とはこれまた予想外だな。外交戦とは言うものの、具体的内容は何だろうか・・んーまたもや情報が乏しくて解らん!

東端の斉と西端の秦が仮に盟を結んだとて、現状ではどういうメリットがあるんだ?というのが正直な所。

昌平君の「合従軍は興らぬ」と「あんなものはこの俺が二度と作らせはせぬ」普通に頼もしすぎるし相変わらずカッコよかったな…「東に鎮座するあの人物」か。未だ「楚の虎・東の大将軍」の異名だけでその姿を作中で現していない項燕だろうが、早く登場してくれないものか(あの廉頗も一目置く点からも筆者、彼の実力が気になって仕方ない)
by お名前(必須) (2016-08-25 08:41) 

かずお

5日中4日飲み続けた信は、立派にヒョウ公の意思を引き継いだ飲兵衛になりましたね。え?酒だけじゃない?失礼しました。昔酒の席であっさりと酔っ払った若き二人は、ただのウワバミになってないと思いたいです。

斎の大王が危険を冒してまで秦国大王と合うには、先の目的を果たすためでしょうか?それとも阻止するためでしょうか。李牧も先の敗戦から無闇に仕掛けず内情把握・国力調査して判断材料を増やすために通過を許可したのかな?と。このままだと楚を牽制しつつ、韓を陥すのが効果的なのかな?と思ってしまいます。
by かずお (2016-08-25 12:46) 

先読みのシャア

李牧と王建王がカンヨウへ来朝するとは・・・
秦王と斉王が話し合うとしたら、秦斉同盟でしょうね。秦は遠交近攻が昔から基本方針ですから。
李牧はこれに対する牽制、もしくは、未締結が目的でしょう。後は、両者共に秦王贏政の人物像を見に来たのでしょう。贏政が化物である所を存分に示して欲しいものです。
でも、三国同盟か、もっと驚く展開になるかもですね。
信も戻るみたいですから、この会談を見て欲しいですが、会談後の親睦会から参加かな?
ひょっとして、前号のコメントでN村さんが李信の李を李牧から貰うっていうのも有るかもですね。
by 先読みのシャア (2016-08-25 21:34) 

下っ端

前回、咸陽の目を盗みってあってミスリードか? って思ってたけど、そういう意図があって咸陽に知らせてなかったのか。 しかし斉王自ら赴くなんて、凄いことだよな~って思った。
てか、今週は飛信隊の成長とか変化見られるかな~って期待してたが、お前らまだ引き継ぎ作業やってたんかいww
この回で、信が酒豪だということが分かった!

by 下っ端 (2016-08-26 18:50) 

冬将軍

前回から、お見合いのシーンを期待してるんだけど・・・ないかなぁ
by 冬将軍 (2016-08-26 21:10) 

名もなき飛信隊員

蔡沢の言葉に痺れました。
蔡沢がここまで秦いや大王を思ってくれていたとは思いませんでした。しかしまたもや李牧が咸陽に足を踏み入れるなんて予想外です。
今回は政と斉王と中華統一について話すかと思うと来週がワクワクします。
しかし信がここまで酒豪だとは驚きです。
蒙恬かわいそうに。王賁来週こそは登場に期待してますよ。
それと信は次にどの将軍の下で戦に行くのかも気になりますね。王セン将軍なんかもおもしろいと思いますがどうでしょうか?
by 名もなき飛信隊員 (2016-08-27 05:15) 

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陽ちゃんとのお見合いはまだですね。
陽ちゃんは王センの娘で王ホンの妹になるので信のお嫁さんにはうってつけですね。
結婚後、リシのところに夫婦養子に入って信はリシンなるのではないでしょうか。
by お名前(必須) (2016-08-27 12:48) 

昭王

秦は国家存亡の危機に陥れた合従軍の首謀者、李牧を捕らえる最大の好機
by 昭王 (2016-08-28 10:59) 

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東端の国の力は計り知れませんね 将軍級も合従軍戦で名前しか出てきませんでしたから 先ずは文官の戦い楽しみですね
by お名前(必須) (2016-08-28 11:04) 

かずお

二度目失礼します、かずおです。管理人様並びにコメント読んで下さる皆様、昌平君が言っていた東に鎮座する方…誰だと思います?斎の大王か、項燕将軍か。前者はまだ外相との接点から内情はある程度掴めても、後者は名前だけで一切登場しない。楚の前王も廉頗も媧燐も最大級の評価する項燕が、昌平君の情報網に掛からないなんて。位置からして斎の王に趙の李牧、韓の兵器開発大好き将軍を相手にしている方ですからね。斎の大王が来秦した理由って対項燕の為じゃないかな?と。李牧の同行も黒羊を奪回しない・させないから、対項燕を見守るのかな?と。背後の憂いが無くなれば秦国は最初に邪魔な韓に攻めさせて、対項燕に集中…と。趙も斎も項燕によほど手を焼いているから、自国の戦力でなく他国の戦力・秦を使って削りたい。その為には大王や宰相自ら訪秦して休戦協定…と思ってしまいました。他国を滅ぼすとは動機の確定で、理由があれば動いて貰う。困っている?二国は休戦協定で項燕将軍が消えるなら良し!と思う程、項燕将軍って強烈なのかな〜〜ヤンジャンと単行本読み直して個人と国家が同等の扱いになっている事に妄想ながら驚いております。
by かずお (2016-08-28 21:09) 

先読みのシャア

昌平君の東に鎮座するとしたのは、斉王の事だと思います。まず王様と、たとえ大将軍であっても1将軍の違いがあり、話の流れから合従軍を興せるかどうかがポイントで、コウエンにそれを興せるだけの名前がまだ轟いていないと思います。それに対して、やはり1国の王なら可能性はある。
合従軍の時、斉は唯一、秦の味方をした。これは一歩間違えたら、自国が攻められる可能性のある危険な賭けだったはず。そして、事実攻められた・・・
過去に滅亡寸前の目に遇ってるのにです。
その賭けも即決して賭けに勝ったのです。
こんな王様はバカかとんでもない化物かのどちらかです。だから、力が未知数なのでは?
私は化物の方だと思いますが・・・
来秦の理由は、やはり対楚の協力要請と、秦王の人物を見るのが目的と思います。
とにかく、次号の対峙がどう展開するか、楽しみですね。
by 先読みのシャア (2016-08-29 23:02) 

pugichi

秦の拡張政策は明白ですが、現在の隣国との戦争状態は、あくまでも秦本土防衛の為とか言ってお茶を濁すのかな?
"また合従軍なんぞ起こされたら敵わんからなぁ"位は言って、李牧に釘を刺すかも?
まぁ、李牧にはバレバレなので、王建には"秦王の言う事聞いたらあかんよ"と諫めると思いますが、合従軍の時に攻められた恨みが残ってるので、王建が聞く耳持たないって流れになるんかな?

斉国最後の王になる王建(その後斉は一時的に復興します)ですが、秦に滅ぼされるまで目立った抵抗もしてませんので、楽毅によって滅ぼされかけた際に落ちきった国力が、未だ回復しきってなかったのかも知れませんね。
by pugichi (2016-08-31 10:44) 

ぬぬぬ

「いかにも」というサイタク様の絵がなんかドラゴンボールっぽい、、
by ぬぬぬ (2016-08-31 21:45) 

しゅうしゅう

同盟を結ぶための密約だと予想していましたので
それがあたっていそうなのは嬉しいけど
大王政からすると、難しい問題を

蔡沢から押し付けられたのかも。

中華に出て行く王だとは他国の王の前では言えないでしょうし。
by しゅうしゅう (2016-09-01 01:28) 

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