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第330話 政、語りかける~秦国の子ら~

大王政は民の前に立った。
蕞の住人は目の前に立った人物が誰だか分からず、降伏しようとしたのを咎められるのではないかとざわついていた。信は無理やり戦えと言っても逆に暴動が起きかねないと心配する。そこに晶文君が叫ぶ。静まれィ我が名は晶文君、秦国左丞相晶文君である。すると住人は丞相が現れたことに畏れおののいた。そして、晶文君は続ける。そして、ここにおられるのは我が国の大王第31代秦王嬴政様である。人民はそのことに唖然とし、言葉を失う。しかし、その時、集められた蕞の住民達に異変が起きる。全員がひざまずき、ざわついた空気は静寂へと変わったのである。涙するものも多く、特に年寄りはむせび泣き、敵に降伏しようとしたことを心から悔いた。
そして、政が語り始める。
秦王嬴政である。よく聞いてくれ、蕞の住民よ。知っての通り、六十万規模の合従軍が函谷関に迫り交戦中である。兵士の奮闘により、函谷関は何とか持ちこたえそうだ。だが、敵の別働隊三万が南道に入り、もはや咸陽の喉元であるこの蕞に迫っている。敵軍を率いているのはあの趙三大天李牧と龐煖だ。そして、咸陽にはこれを迎え撃つ準備がない。
政の声はよく通った。そしてその声は圧倒的ではないが、力がこもっており、住人一人一人にしっかり語り聞ける口調であった。
政は続ける。
つまりこの蕞が敵軍を止めることができる最後の城だ。もう一度言う。蕞で敵を止めねば秦国は滅亡する。
住人の一人はここには軍はわずがにしかおりませんと言うと、政は承知している。だが止めるしかないのだ。この蕞でと返す。
住人は自分達が戦って敵を止めなくてはならないことを痛感する。
政は再び語り出す。
恐ろしいのは分かる。敵は屈強でこちらは老人、女子供も多い。戦えば多くの血が流れ、多くの者が命を落とすであろう。だが、そなたらの父もまたその父親達も同じように血と命を散らして今の秦国を作り上げた。今の生活はその上に成り立つ。降伏すれば敗れればそれらは全て無に帰し、秦の歴史はここで途絶える。秦人の多くは虐殺され、生き残った者も土地を奪われ列国の奴隷に成り下がるであろう。そなたの子もまた次の子も。それを止められるのはそなた達だけだ。
政の言葉に一人の子供が立ち上がり、オイラは戦う!と叫ぶ。周りが無礼だ、座れと制するが、政は構わん。勇敢な少年よ、そなたの名はと尋ねる。甘仁の子甘秋、お父は函谷関で戦ってて、だからオイラが家族を守れってお父がっ…お母と小さい妹を敵国の奴隷になんか絶対させないと叫ぶ。政は甘仁の子甘秋よ、この地で共に戦えることを誇りに思うぞと語る。住人は共に戦うと言う言葉を聞き、大王は咸陽に戻って欲しいと叫ぶが、政は戻るものか、秦の命運を握る戦場に共に血を流すために俺は来たのだと返す。その言葉に次々と住人は奮起し始める。そして、蕞全住人は立ち上がり、自ら戦うことを決意する。
政はさらに続ける。心の準備は整ったか、530年続いてきた秦の存亡をかけた戦いだ、必ず祖霊の加護がある。こらまで散っていった者達も必ず背を支えてくれる。最後まで戦うぞ、秦の子らよ、我らの国を絶対に守りきるぞ。


さすが政。無礼とかは全く気にしなく、蕞の住人自ら戦うことを決意し、奮起させた。戦闘力は別にして、士気は最高潮となった。これで容易く落とされることはないだろう。しかし、李牧を退けるまでは厳しいか…
来週以降どんな戦いが繰り広げられるか非常に興味深い。
今週は政の言葉が気になるところでありましたので、ほぼ一言一句そのまま掲載致しました。
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キング中

おはようございます。

早速、出勤前にコンビニで読みました。コンビニで半泣きになりそうで恥ずかしかったです(笑)
それくらい今週号も熱かった!
子供が立ち上がり名前と戦う意志を表すとこなんか涙腺ヤバかったですね(T_T)

来週号もまたまた楽しみです。
キングダム最高!!
by キング中 (2013-02-07 08:03) 

お名前(必須)

このまま、李牧と龐ケンと戦うには、正直厳しいと思う。そこで、山の民以外の戦力増強を考える。ここで過去のヤンジャンを読み返す、、、呂不韋が刺客を城内にいれたの記述を発見!まさか!刺客で信と政側について、なおかつ龐ケンと戦えると言ったら、キョウカイの妹分の2人か!とくだらない妄想をしてみたがあの2人が政を暗殺しようとして、信にあっさり倒されてしまい、我が一族は、男に負けたらその男と結婚をしなくてはならない!とか言い出したら笑える展開だと思ってしまった(爆笑)
by お名前(必須) (2013-02-07 09:37) 

シュリンプ

熱くなりましたね!!
今の日本もあれくらい共に立ち上がるようなふうにならないかな(笑)
by シュリンプ (2013-02-07 12:15) 

きんねこ

今回は王という存在の偉大さがよく伝わりました。
私も涙腺がうるっときてこらえるのに必死。。。

山の民はどこかのタイミングで応戦にくるとして、
キョウカイが参戦するという事はないですかね?!

今、キングダムを読み返していて、レンパ編が終わったところなので、信とキョウカイのタッグを久々に見てみたくなりました。
by きんねこ (2013-02-07 13:02) 

名無し

キングダム史上最も鳥肌立ちました!

来週以降楽しみです!
by 名無し (2013-02-07 15:25) 

タワタ

今回、感極まりました。これぞまさに君主のなせる行為。日本も陛下に対し、これくらい敬いをもたなくては。
by タワタ (2013-02-07 15:39) 

キングムダ

無駄王ことキングムダです。今週号も感動しました(泣)。次号からついに決戦に突入でしょうけど、ここで大好きなヒョウコウさんネタでまた妄想してしまいましたので、無駄に長い文章ですが、お暇ならお読みください。
李牧軍が明日にも迫る状況で、信はヒョウコウ将軍の盾を見ている・・・。
信 将軍なんで俺にこの盾を・・。
政 どうした。また泣いているのか?
信 なんだとお。
信 (将軍の大きな盾を眺めながら)ヒョウコウ将軍は左腕を切り落とされて殺られちまった。あん時にこの盾があれば・・。
政 お前。本当に分かってないな。
信 なんだとおおおお。
政 その無数の傷に気付かんのか?
信 傷・・盾に小さな傷が無数に・・どれも新しい。
政 お前を守った傷だ。
信 !
政 ヒョウコウ将軍は自分が死んだら、お前が腑抜けのようになると分っておられたのだ。それで馬上のお前の背中を矢が狙う。お前の背を守るためにお前にこの巨大な盾を託したのだ。
信 回顧シーン(走る馬にバンバン矢が狙って飛んでくる。盾が守っている。)
政 将軍は自分の左腕よりお前が大事に思われたのだ。この盾がなければ、お前はいったい何回死んだんだ?
信 将軍・・・(ヒョウコウ将軍との回想シーン。特に酒のシーンですな。)。李牧ぅ。ぜってぇかたきを討つ。
政 ようやく安心して今日は寝られるな。
信 んっ
政 民衆はもう大丈夫だ。あとは民衆の先頭に立つ者。お前に立ってもらわんとな。いつまでも泣かれてたんじゃあな。
信 (怒)とうに立ち直っとるわい。
政 (ほほ笑む。)明日は決戦だ。もう寝よう。
(その場を去ろうとする。)
信 政
政 ん?
信 わりいな。
政 気にするな。
・・・・・飛信隊がんばってくれ。

by キングムダ (2013-02-07 19:45) 

なおきち

今回は、テンと一緒に鳥肌を立てて政の言葉に感激しました。笑
彼の言葉だけでなく、共に戦おうとする行動が民のハートに火を着けましたね♪

これまでも強い武将は、秦国問わず出ていましたが、最も凄く、かつ、中華統一を成すのに必要な人物は、政なのかなーと思いました。
でも個人的には、やっぱり信が好きだぜ!
by なおきち (2013-02-08 11:00) 

三度の飯よりキングダム

立ち読みするたびに涙腺が熱くなります!
もう何もかも忘れて鬼神に!
by 三度の飯よりキングダム (2013-02-09 00:21) 

オギコ

政かっこよかったΣ(゚д゚lll)

来週が楽しみ( ^ω^ )
by オギコ (2013-02-09 15:41) 

田舎のおじさん

おっおーい。立ち読みの方のコメ多いけど、買って読まんかーい。ここのブログ白熱してるから、絶対に集英社の社員さんもチェックしてまっせ。原先生もガックリやがな。まっ単行本派ならOKやけどね。
by 田舎のおじさん (2013-02-09 19:11) 

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